さる4月22日に
・詐欺罪
・詐欺幇助
・脱税
の3つの罪で起訴された「頂き女子りりちゃん」こと渡邊真衣被告人(25)の判決が下されました。
検察側は「実刑懲役13年および罰金1200万円」を求刑し、名古屋地裁は「実刑懲役9年および罰金800万円」の判決を下しました。
控訴の方向で進めていますが、とりあえず地裁判決は出ていますので「有罪判決頂き女子」(女子という年齢か?はこの際どうでもいいです)となりました。
→5/1付で控訴したようです。
この判決について考えてみたいと思います。
内容が悪質かつ3つの罪に問われたと考えれば妥当な判決結果
まずは法定刑から見ていきましょう。
今回の罪は冒頭で書いた通り
・詐欺罪
・詐欺幇助
・脱税
の3つが問われました。
それぞれについて法定刑が定められているので見てみましょう。
詐欺罪(刑法246条)
法定刑:10年以下の懲役
人を欺き、個人の財産を搾取した場合に問われる罪です。
金銭だけでなく、騙してサービスを受ける行為(飲食など)も同罪です。
この詐欺罪、かなり重い罪で、なんと「罰金が定められていない罪」です。
詐欺をすれば問答無用で懲役刑が下されます。
人の財産を直接害するという意味で、殺人罪と同等クラス(さすがに人命を奪う殺人罪の方が詐欺罪より重いですが)、重い罪が決められています。
詐欺幇助(刑法62条1項および刑法63条)
法定刑:幇助の内容による
今回の場合は詐欺行為を幇助する(詐欺行為のマニュアルを頒布した)行為も罪に問われました。
詐欺幇助の罪は法定刑で「5年以下の懲役」となります。
脱税(所得税法238条)
法定刑:10年以下の懲役、もしくは罰金1000万円以下(免れた所得税の額が1000万円を超える場合はその額以下)、またはその両方(併科)
脱税は税法である「所得税法」で罪が決められています。
税申告では
・申告漏れ(正確には「追加で税を支払う場合」の申告漏れ。還付がある場合についての申告漏れは罪に問われません)
・所得隠し
・脱税
の順に罪が重くなっています。
脱税の場合は最も悪質とみなされ、懲役と罰金の両方が下される場合があります。
以上3つの罪をまとめると…
単純な量刑の加算で言うなら
「15年以下の懲役、および1億5500万円以下の罰金の併科」
となります。
人生終了と言っても過言ではない罪の重さです。
実際の判決は…
冒頭に書いた通り、検察側は「実刑懲役13年および罰金1200万円」を求刑し、名古屋地裁は「実刑懲役9年および罰金800万円」の判決を下しました。
この判決は妥当だと自分は考えています。
基本的によほど悪質で人命を奪う殺人犯や放火犯でない限り、初犯に対しては「執行猶予付きおよび求刑の8割程度」の判決が下されます。
今回、裁判所は「手口が悪質」と判定し、初犯ながら執行猶予は付かなかったものの、懲役の長さと罰金額については8割程度のものとしました。
ネット界隈では「ちょっと重すぎるのでは?」と言われていますが、自分からすれば法定刑や手口の悪質さから考えれば至極妥当な判例だと思いますね。
初犯だから、なんて法定刑と悪質さから考えれば裁判では情状酌量の通じる世界ではありません。
被告人の待ち受ける道
今回は「刑事裁判」の判決です。
被告人は更に被害者が被害届を出して受理された場合、損害賠償の「民事裁判」も受ける必要が出てきます。
控訴審について
被告人側は控訴の意向を示していますが、かなりの確率で「控訴棄却」される見込みです。
そもそも控訴しても棄却される確率が高いのはあまり知られていません。
上記の通り概ね「7割」は控訴をしても棄却されます。
つまり、1審判決がそのまま維持されることが多いというわけです。
刑事裁判でよく弁護士は「控訴」しますが、7割は棄却されます。
控訴棄却された場合、未決勾留日数が一部しか算入されず結果として控訴しなかった場合に比べて社会復帰が遅れる可能性があります。
ここら辺は法律に疎いと「なんでも控訴して有利な判決を出してもらおう」と勘違いされがちですが、そうそう判決は覆りません。
控訴審に持ち込む前に門前払いを食らうことが多いのです。
さらに、今回は弁護側は「国選弁護士」です(被告人が「預貯金はほぼない」と立証していることから「私選弁護士」を雇うことは考えられないため)。
国選弁護士の報酬はお世辞にも高いとは言えず、かなり安いです。
同じ刑事裁判で同じ判決を勝ち取っても全然違います。
正直、国選弁護士に選ばれるくらいならさっさと結審、判決確定させて別の仕事に移りたいという弁護士が多いです。
さらに、判決内容を鑑みるに、「これ以上の減刑は見込めない」と思う弁護士が多いと思います。
単純な重加算刑でなく求刑が若干軽め(3重の併科と多額の脱税であるものの、罰金求刑額がかなり低め)、加えて求刑の8割という判決から言えば「十分妥当」です。
このことから、国選弁護士も積極的にこれ以上動くとは思えないです。
もちろん、被告人が強く控訴を望むなら別ですが、正直現実は「これ以上審理や判決を先伸ばしても得なことはない」と言いたいでしょうね。
(現実的に早く社会復帰したいと思うなら、控訴せずに判決を確定させたほうが得なため)
被告人の人生は茨の道…
被告人は「お金は少しずつ返していくつもり」と語ったようですが、正直まともに稼いで弁済できる額ではありません。
もし全面的に弁済の場合、「約1億5500万円」ですよ?
大企業で40年勤めあげても手取りで考えるならここまでもらえるには相当働かないといけません。
被告人は25歳当時「無職、財産無し」です。
真っ当に働いたこともないであろう被告人が、出所後に就職して弁済できるとは到底思えません。
刑事裁判で800万円(地裁判決が確定した場合)に加えて、もし民事裁判で「被告は被害者に対し弁済のこと」となった場合は、当然弁済義務が生じます。
罰金や賠償金が払えないなら自己破産すればいいのでは?→そう甘くはありません!
借金とかで返済が困難なら「自己破産」でリセットすればいいのでは?と考える人もいるでしょう。
残念ながら、その手は通用しません。
自己破産が認められるのは「裁判所が認めた場合のみ」です。
きっちり内容を精査されて「このケースは自己破産が認められる」とされた場合のみ、自己破産が成立します。
一方で、刑事罰の罰金や訴訟の弁済義務は「非免責事項」です。
つまり、自己破産で絶対にリセットできないのです。
もし、刑事罰や民事罰のケースも認められるなら誰もが莫大な弁済義務を「自己破産」で片付けてしまいますね。
そうなると被害者などは泣き寝入りになってしまい、罰を下せないので絶対に認められることはありません。
参考:破産法253条1項2号
破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償・慰謝料の支払義務は、自己破産をしても免除されることはない
まとめ
仮に今から刑務所に入って懲役9年+罰金が支払えない場合は更に最大2年(刑法18条1項で労役場に留置できる最長は2年間と制限されています。なので「日給1万円」というのは800万円÷2年の計算です。2年以下で弁済できる場合は労役場の日給手当は5000円になります。罰金10億円とかであっても2年労役場で働けばチャラです)=11年は刑務所の中です。
仮釈放を認められた場合でも約10年は刑務所の中でしょうね。
そう考えると出所するのは「早くて35歳」になります。
ここから、被害者の損害賠償金を弁済するとなると非常に苦しいです。
上記の通り、このケースは自己破産による免責が効きません。
支払えない場合は行政の「強制執行」の対象となり、あらゆる財産(土地や銀行口座、働いている場合は給与も。今回の被告人は見る限り土地なしなので、それ以外のあらゆる財産が差し押さえ対象)が差し押さえられます。
つまり、支払いを終えるまであらゆる制約がかかるというわけです。
返す返さないではなく「返すまでどこまでも追いかけられます」。
貯金がないとか、言い訳は一切通じません。
成人なので名前は割れていますし、悪質で実刑有罪判決(まだ控訴や上告ができるので確定ではありませんが、刑期や罰金額は上下しても有罪判決は確定でしょう)、出所時には「早くて35歳前科持ち」というあらゆる方面にマイナスの状態でスタートです。
まあそれだけの有罪判決を食らうほどのことをやらかしたので、一切同情の余地はありませんが、どのみち逃げられない罰を一生背負って生きていかなければならないことは確かです。
「生い立ちが不憫だから~」なんて司法国家では通用しません。
不憫だったら殺人が許されるのか、強盗OKなのか、詐欺は問題ないのか?
自分が被害者だったら笑って済ませられるのか聞きたいところですね。
こういうことですよ。
紛争地帯に住んでいて、支援物資が行き届かず、親や子を食わせるためにやむなく食品を盗んだとは訳が違います。
日本に目を向けても、幼少時に育児放棄されても真面目に生きている人はたくさんいます。
それを自己の欲求を満たすためだけに詐欺マニュアルを作って頒布して荒稼ぎする奴に同情の余地があるとは思いませんね。
あと、露骨に反省してないように見えるのですよね。
(被告人の手記より)
より詳しく知りたい方はこちら
(見ない方がストレス溜めなくて良いかと思います)
あ、ここデカいブーメラン刺さってます。
「サギ師の涙ほど信用できないものないだろ」
あなた自身のことですよ?
こんな人道を踏み外す奴には自分から一言
「己の不憫さを嘆く暇があるなら、己と己の環境を変えようとする努力を惜しむな。自己満足のためだけに他を貶めるな」