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ゲームの世界をCADで現実にする。3Dモデルを作るのが得意です。他にゲームとしてプリコネやディスガイアシリーズの攻略などを書いています。

【漫画解説】DEATH NOTE(デスノート)の主人公・夜神月の価値観に想うこと

かつて大学にいた時、一般教養の授業でデスノートのことを話題に講義をした教授がいました。

詳しい内容は忘れましたが、なかなか面白い講義だったことは覚えています。

せっかく不意に思い出したことなので、考えさせられる部分について書いておきます。

 

DEATH NOTE(第1巻表紙)

 

 

 

 

DEATH NOTEデスノート)はどんな漫画か?

デスノートは、2003年12月から2006年5月まで「週刊少年ジャンプ」で連載されていた漫画です。

その後、アニメ化や実写化もされるなど幅広い人気を誇っています。

 

他のジャンプ漫画と大きく違う点は、戦闘シーンはなく(ジャンプと言えばドラゴンボールやワンピースなど戦闘漫画の人気が特に高いですよね)、主人公が悪役で最終的に死亡するという非常に毛色の変わった内容です。

 

ストーリーも非常に緻密に練られていて、何度読んでも面白い作品と個人的に思っています。

連載当初はまだ小さかったのでリアルタイムで読んでいなかったのですが、2003年12月(ジャンプ雑誌連載は2004年1月)から開始した作品だったのですね。

 

 

 

主人公・夜神月の名言

主人公である夜神月の名言はいくつもありますね。

・新世界の神となる

・駄目だこいつ…早く何とかしないと…(これは発した言葉ではなく、心の中で思ったものです)

・計画通り(これも発した言葉ではなく、心の中で思ったものですが。しかし、顔が完全に悪役です)

 

しかし、最も印象深いのは原作での最終盤の名演説です。

 

 

 

最終盤の名演説

その中でも、主人公の夜神月は最終盤でやたらと長い台詞(演説)をします。

その全貌は以下の通りです。

個別に思うところは赤太字にして感想を書いています。

 

 

 

そうだ、僕がキラだ。

ならばどうする、ここで殺すか?

いいか、僕はキラ。

そして、新世界の神だ。

今の世界では僕(キラ)が法であり、僕(キラ)が秩序を守っている

これは事実。

もはや僕(キラ)は正義。

世界の人間の希望。

殺すか?

それで、本当にいいのか?

キラを捕まえる。

それが過去において正義だった事もあったかもしれない。

しかし、今は明らかにそれは悪。

世界の意識は変わったんだ。

キラを捕まえるという自己満足をとるのか?

キラが現れ、6年…。

戦争はなくなり、凶悪犯罪者のほとんどが死に、世界の犯罪は7割減少した………………

しかし、まだ世の中は腐っている。

腐った人間が多すぎる………。

ならば、なくさなければならない。

人間は幸せになることを追求し、幸せになる権利がある。

しかし、一部の腐った者の為に、不意に、いとも簡単にそれが途絶える。

…事故じゃない。

腐った人間が生きている事による必然。

僕がノートを手にした時、いや、その前から…、世の中は堕ちるところまで堕ち、人間は腐るところまで腐っていった

突き詰めれば、人が幸せになるのに害のある者か、ない者か…、生きるに値する者か、しない者か…。

悪は悪しか産まない。

意地の悪い人間が悪事を行い、世にはびこるならば、弱い人間はそれを習い、自分も腐っていき、いつかはそれが正しいと自分を正当化する。

悪は…腐った者は…なくすしかない。

はじめから救いのない様な悪には死しかないだろう

しかし、腐った人間=死ではない。

よって、こういう世の中を創ってきた悪の根源からメスを入れていく。

悪い人間は裁かれる………。

人に害を与える人間も裁かれる。

それだけで人間の意識は変わってくる。

人として正しい生き方に気付き始める。

幸せになる権利、それは皆に平等にある。

いや、なくてはならない。

それは、他の人間を攻撃したり、陥れたり、ましてや殺すことで得るものではない。

互いの幸せを邪魔することなく、互いの権利を尊重し、個々の幸せを求めていくのが人間同士のあるべき姿

世の中が変わってくれば人間も変わってくる………………………。

優しくなれる………。

それでも変わらず悪事をはたらく者は、人間失格

本来、人間は地球上で一番優れた生物として進化をしていかなければならない

…だが、退化していたんだ…。

腐った世の中…政治…司法…教育…世の中を正していける者がいたか?

しかし、誰かがやらなければならない。

ノートを手にした時思った。

僕がやるしかない。

いや…僕にしかできない!

人を殺すのが犯罪なんて事はわかっている。

しかし、もうそれでしか正せない。

いつかそれは認められ、正義の行いとなる。

僕がキラとしてやるしかない。

これは僕に与えられた使命。

自分はこの腐った世の中を革め、真の平和・理想を創生するため、選ばれた人間

このノートで…他の者にできたか?

ここまでやれたか?

この先できるか?

ノートひとつで世界を…人間を正しい方向へ導けるか?

私利私欲の為にしか使えない、自分の為にしか使えない、馬鹿な器の小さな人間しかいないじゃないか!

僕は自分の利益など一度も考えたことはない!

弱者に自分の思想を植えつけ、金儲けをしている悪党とは全く違う!

そういう悪党こそ世の中の敵なんだ!

そうさ、僕にしかできない…新世界を創れるのは……………その頂点に立ち、常に正しく導けるのは僕しかいない…

考えろ。

また腐った世の中に戻していいのか?

変わりつつある人々の意識を戻していいのか?

おまえにだってわかっているはずだ。

人間には明らかに死んだ方がいい人間がいる。

害虫は殺せるのに、何故害のある人間を殺すのを悪とする?

ここでキラを潰していいのか?

それが本当に世の為か?

ここで僕(キラ)を捕まえてどうなる?

おまえが嬉しいだけじゃないのか?

それはおまえのエゴでしかないんじゃないか?

Lの仇というならば、それこそ最も愚かな行為だ。

おまえが今、目の前にしているのはキラだが、新世界の神だ

 

 

 

すげぇ長い台詞!

 

ここまで1人がずっと喋った人物が過去の漫画であったでしょうか?

もし声優さんに喋らせるなら間違いなく泣くでしょうね?

覚えるだけでも一苦労。

まして澱みなく喋るなんて至難の技でしょうね。

 

 

 

本題ですが、ここまで長い台詞の中には色々と考えさせられる部分がたくさんあります。

だからこそ、講義の題材にもデスノートが選ばれたのでしょうね。

 

この中で、特に興味深い部分を抜き出して考えてみます。

 

 

今の世界では僕(キラ)が法であり、僕(キラ)が秩序を守っている

1人が法となって秩序を守るなんて、もはや独裁者と言ってもいいでしょう。

しかし、独裁者は「政治、法律、軍事」などといった一国家全ての権力を手中に収めた人物を言います。

主人公の夜神月はあくまで「法と裁判」しか力を行使していません。

そのため独裁者というには筋違いでしょう。

しかし、「常に監視をして、悪事を働けば問答無用で裁きを下す」という点では政治にも影響を及ぼす(実際に作中ではアメリカがキラを認める(=従う)宣言をしています)ので、独裁者の面もあるのも事実です。

司法の面で言えば、全世界の独裁者と言えるでしょう。

 

 

戦争はなくなり、凶悪犯罪者のほとんどが死に、世界の犯罪は7割減少した

この成果は凄いの一言です。

世界の犯罪の7割を減少させるなど、今後誰にもなしえないことでしょう。

たとえ一国家であっても犯罪の抑止は困難であり、まして全世界の犯罪の7割を減らすなど到底不可能です。

これには感嘆の一言です。

 

一方で、その犯罪の7割の減少のために、デスノートの犠牲者もかなりの数があったのも事実です。

凶悪犯罪者に加え、キラの独断で裁かれた人物も相当でしょう。

ルパン三世の銭形警部の台詞ですが「どんな悪人であっても平等に裁判を受ける権利がある」とあります。

キラはその四方の範疇を破って「独断で裁く(しかも死刑)」という超法規的なことをやっています。

そのため、ニアからは「あなたはただの人殺しです」と言われています。

 

 

世の中は堕ちるところまで堕ち、人間は腐るところまで腐っていった

これも今の世界の様相を表していますね。

原作は2003年と20年も前ですが、腐敗した世の中は今も変わらずです。

イラク戦争然り、ウクライナ問題然り、イスラエル問題然り。

世界の戦争や紛争を見ても山ほどあります。

凶悪殺人事件も日本でも毎年のように起きていて、世界を見ればもっとあるでしょう。

キラはその現実に絶望して、腐った人間を排除しようとしたのでしょう。

 

 

はじめから救いのない様な悪には死しかないだろう

これは人間の「性悪説」ですかね。

どうしようもない人間は一定数いるのは事実です。

しかし、凶悪犯罪を働いた働いたからといって「もう救いようのない」というのはどうかとも思います。

「更生の余地」があるからこそ司法は死刑のみならず懲役刑があります。

しかし、「なぜこの犯罪者が死刑ではないのか」、「死刑判決確定から10年以上も放置されている」という矛盾もあります。

人間というものが成長するうえで「世の中では何が悪で、何が善とされているかを学ぶ、本能だけでなく理性と知性のある生物」です。

なかなかに難しい問題です。

 

 

互いの幸せを邪魔することなく、互いの権利を尊重し、個々の幸せを求めていくのが人間同士のあるべき姿

確かにこの発言にある通り、「幸福追求の理想の姿」はこうあるべきでしょう。

しかしながら個々が自由に、他人に干渉することなく幸福を追求できるなら、衝突は起きません。

まして戦争なんて起きはしません。

必ず衝突があり、言葉や話し合いで解決ができないからこそ犯罪や戦争が起きるのです。

 

 

本来、人間は地球上で一番優れた生物として進化をしていかなければならない

これはエゴですね。

現在、地球で最も進化した生物は人間でしょうが、これから何千年、何万年、何十万年後も人間が最も優れた生物であるでしょうか。

所詮人間の歴史は地球が誕生してからほんの微々たる時間です。

進化もあれば退化もあります。

「人間は進化し続けなければならない」のは人間が他の生物と違って本能に加えて理性があるからこその思い込みでしょう。

 

 

自分はこの腐った世の中を革め、真の平和・理想を創生するため、選ばれた人間

最大にして最大の思い込みですね。

自分が選ばれた人間というのは肥大化した自尊心に他ならないです。

ここで主人公の夜神月の歪んだ考えがよく表れています。

 

 

私利私欲の為にしか使えない、自分の為にしか使えない、馬鹿な器の小さな人間しかいないじゃないか!

確かに、私利私欲で快楽でノートを行使してきたわけではありません。

もしこんな人の生死を1人の手で自由自在に操れるような道具が自分の手に入ったのなら、その気になれば個人の欲望だけで世界を支配することも可能です。

言う通り、「私利私欲のためだけに使ったのではない」のは事実でしょう。

しかしながら、「独断で人を裁いた(生死を決めた)」のは事実です。

もし1人ではなく、世界の総意でノートを行使していたのであればまた違った世界になっていたでしょうね。

とはいえ、こんな代物があれば世界の権力者は「自分だけの物にしよう。そして世界の頂点に君臨して支配しよう」と争いをするのは容易に想像できますが。

 

 

そうさ、僕にしかできない…新世界を創れるのは……………その頂点に立ち、常に正しく導けるのは僕しかいない…

確かに優秀ですが、唯一神と自称するのは自己を過大評価しすぎでしょう。

 

 

害虫は殺せるのに、何故害のある人間を殺すのを悪とする?

この話題もたまに見ますが、「人権の有無」でしょうね。

ただ人権も勝手に人間が作ったものであるのも事実です。

生物に対しても、「動物愛護法」があります。

ただ、この法律で保護されているのは人が勝手に決めた生物だけというのも確か。

これもまた難しい問題です。

 

 

 

まとめ

「人が人を裁く」、「凶悪犯罪の蔓延」、「世界や政治の腐敗」など世界の問題をうまく取り上げられた良作品です。

結局、この問題に正解なんてものはなく、「正義とは何か」と同じです。

互いに正義(正しい行動)と思うからこそ衝突が起こるのと同じです。

結局この作品でも、明確な答えは出されず、読者に想像をゆだねられています。

だからこそ色褪せず、いつまでも議論がされる良い作品と言えるのでしょう。