「ツァーリ・ボンバ」というものをご存じでしょうか?
ツァーリ・ボンバとは旧ソ連(現ロシア)が冷戦時代に開発した「水素爆弾(水爆)」です。
その威力は凄まじく、実験は成功したものの実戦投入されることはありませんでした。
「ツァーリ・ボンバ」とは?
ツァーリ・ボンバとは「爆弾の皇帝(帝王)」を意味します。
その威力は「皇帝(帝王)」の名に恥じぬ威力を持ちます。
TNT(トリニトロトルエン、いわゆる「ニトロ」と呼ばれている爆薬の原料)換算で「100メガトン」とされています。
広島型原爆のリトルボーイで「16キロトン」、長崎型原爆のファットマンで「21キロトン」とされていることから、まさに「桁違い」です。
(メガはキロの1000倍の単位です)
100メガトンは第2次世界大戦の使用された爆薬総量の約50倍ということから、この兵器1つの威力のすさまじさが分かることでしょう。
ツァーリ・ボンバの威力は?
実験では100メガトンの爆薬は危険と判断されたのか、そもそも実験段階でそこまで用意する必要性やコストのためか、半分の50メガトンで実験検証されました。
その爆破の衝撃波は「2000km離れた地点でも観測された」とされています。
2000kmといえば、日本で言えば「北海道の北端から鹿児島の南端まで」に相当します。
もし北海道の知床岬で実験をしたとすれば、鹿児島県でもその衝撃波が到達することになります。
さらにその衝撃波は「地球をぐるっと3周した」ともされ、その爆発の凄まじさをここからもうかがい知れます。
爆発と熱線の威力
実験では爆発による衝撃波は高度10.5kmにまで到達したと観測されています。
これだけの爆発なので、爆弾を落とす航空機も退避できないと衝撃波で墜落してパイロットなどは死亡してしまいます。
そのため、退避するための時間を稼ぐために、爆弾が地上まで落下するための時間を稼ぐ目的で、多段階パラシュートを取り付け、爆弾の落下時間を稼ぐ設計を施したそうです。
爆円の威力は更にすさまじく
①半径6.6km以内は放射線によりほぼ即死
②半径23km以内は爆風により高殺傷能力あり
③半径100km以内は3度火傷を負うほどの熱量を持つ熱線
とされており、半径100km以内の人間はまず生きていられないでしょう。
かろうじて生き残っても瀕死レベルです。
重ねて言っておきますが、これは「実験用に爆薬の量を半分にした試験爆弾での検証結果」です。
もし、本当の設計思想である爆薬量100メガトンでやっていれば更にすさまじい被害をもたらすことになります。
以降のツァーリ・ボンバはどうなった?
実は、ツァーリ・ボンバはこの1度の実験のみしかされておらず、開発もされていません。
実践運用に乏しいのが理由です。
それは
①爆薬の量が半端ではない→非常に高コストかつ1つの兵器に使用するにはあまりに実用性に欠ける
②実践的ではない→単一兵器としての威力はすさまじいものの、ある1地点を中心とした都市しか破壊できず、コストに見合うリターンが得られない
というのが理由です。
そもそも初期の段階から兵器として投入することは考えられておらず、「これだけの爆薬を使ったらこれだけの威力を出せる」という試験目的であったとされています。
しかしながら、単一兵器としては人類史上最大の兵器であることは間違いありません。
もし日本の東京に落とされたらどうなる?
不謹慎な話ではありますが、もし実験で使用されたツァーリ・ボンバが日本の東京に落とされたらどうなるでしょうか?
まず、東京23区は「焼野原」です。
ほとんどの人は一瞬のうちに死亡するか、衝撃波で吹っ飛ばされて壁に叩きつけられます。
爆心地から離れていても熱線で重度の火傷を負うことでしょう。
「完全に東京は壊滅し、政府機能は完全に停止します」
東京以外でも関東圏はその衝撃波で、家屋は爆風で壊れるでしょう。
少なくとも東京に隣接する神奈川県や千葉県などは多大な被害を被ります。
ただし、「日本完全壊滅」までには至りません。
さすがに北海道や神奈川は衝撃波の影響などはあっても壊滅状態には至りませんので。
もし日本全土を焦土と化す威力が出せるとすればさらに数千倍の爆薬が必要になるでしょう。
そもそもそんな爆薬をかき集めるのが大変ですし、作ったところで超大型の航空機で運搬しないといけません。
何もかもが現実離れしているので、実戦で使うものを作る前提であれば、ロマン兵器を作るくらいならもっと効率的なものを作ろうとするはずです。
まとめ
冷戦時代には東のアメリカ、西のソ連という世界二大大国が兵器開発などでしのぎを削っていました。
表向きは宇宙開発などと称しながら(実際宇宙開発で空から監視する目的もありましたが)、ミサイルや爆弾などの兵器開発をしていました。
結果として、飛躍的に科学技術は進歩しましたが、今なお多大な核兵器が世界各国に眠っています。
保持国は防衛目的なども兼ねて放棄せず、むしろ逆に北朝鮮のように積極的にミサイルなどの軍事開発を行う国すらあるのが現実です。
こういう国が存在する限り、本当の意味で世界平和が来ることは個人的にはないというのが思いです。